清水國明の「自然樂校&森と湖の楽園」で自然暮らし | 山梨県南都留郡富士河口湖町

清水國明 執筆原稿

2007年6号

月刊『リゾート物件情報』 「清水國明の河口湖自然楽校便り」

今、いつかやってみたいと思っているのは、たった一人で森に入って、チェーンソーやクレーンなどの重機も使わないで建てるログハウス。交通の便が悪く誰も訪れることもないような山の中で、たっぷりと時間をかけて。例えば部材が足りないからといってホームセンターへ走ることもできないところで、そこにあるものだけで、あれやこれや何とか工夫しながら造り上げてみたいと思っています。

これまでに、もう10棟以上もログハウスを建設して、どんどん技術も段取りもステップアップしてきたのですが、なんだか完成したときの感動が効率に反比例して減少しているように感じるのです。

photo何もわからないまま、チェーンソーとスクライバーを購入して、いったいこれはどう使うものか、から始めました。チェーンソーのエンジンがなかなか掛けられずに、それだけで体力の大半を使ってしまう、情けない日々でした。そうか!と半年後に気づいたエンジン始動のコツ。今考えるとコツというよりも、マニュアルしっかり読んでその通りの手順を踏めば、誰だって簡単に掛けられるエンジンを、むちゃくちゃなやり方で、わざわざ苦労していたのです。けれど、それに気づいてエンジンがほぼ100%の確率で始動できるようになったときの感動は、それまでの苦労が大きかっただけに、最高の喜びでした。これが最初から解っていたり、誰かに教えてもらったりしていたら、苦労はなかったけれどあの感動もなかったのです。スムーズにことを進めることや、楽することを優先して考えるならば、自分でやるのではなくて、すべてを誰かに頼んでしまえばいい。専門の人にお願いして造ってもらえばいいのです。けれど目的がログハウスを所有したいのではなく、造りたいのだから、だとしたらなるべく非効率で、苦労する方法を選ぶのが正解です。

時間や体力、技術、金銭的制約でこれまで妥協してきたことがたくさんあります。けれど一番の贅沢、感動の多いやり方は、たっぷりの時間をかけ、誰にも頼らずに完成させることです。世の中が便利になりすぎて、知恵や技術を持つ人の出番が少なくなりました。誰でも快適に過ごすことができるようになったので、それはとてもいいことなのですが、便利で楽な生活を続けていると人間は間違いなく馬鹿になりますし、根本的に楽と楽しいは違うので、楽だけれどなんだか楽しくない日々になってしまうのでしょう。アウトドアが好きな理由は、自然の中はまだ不便や不快がいっぱい残っているから、それを改善する仕事がある。つまり技術を持つ人の出番があるから自然が楽しいのだと思います。だれでも快適に暮らすために生活を改善する技術や知恵を潜在的に持っています。その出番が与えられていない状況が、現代のストレスを生むのは間違いないでしょう。

ログハウスなんてものは、快適便利の対極にある建物なのに、わざわざ苦労して、その苦労を楽しみたいという、ちょっとMの体質の人が住む代物です。セトリングという、丸太が痩せて沈み込む現象や、ひび割れが起きます。カビだって生えるしホコリがたまりやすいやすい凸凹壁です。そんな苦労をあえて、わざわざするためにログハウスを建てたり買ったりするのは、直感的に「楽ではないけれど楽しいがある」と思うからでしょう。

そのあたりがログハウスの魅力なのだと思っているのですが、これまで何度か、周期的にやってきたログハウスのブームのときに、こんなにみんなが喜んでるのは、「楽で楽しいからだろう」と勘違いしてログハウスを手に入れてしまった人たちは、手がかかる生活の面倒くささに、びっくりし、そしてがっかりしたのです。そんな人たちでも、快適で楽に過ごすことができるログハウスが開発されて、再びブームの兆し。つるりとした壁や、みんな同じ形、太さの丸太を積み上げたものもログハウスのカテゴリーに入ってきたので、楽で便利なログライフが可能になったのです。正直言えば不本意なのですが、諸般の理由でボクも河口湖の森の中に、今風の、便利で楽なログハウスをたくさん建てています。
森と湖の楽園の入り口に造った「ばっかり市場」は、6棟のログハウスを連ねました。
いわゆる角ログで、簡単に組み上げられます。総合受付やうどん屋さんなどの建物も同じミニログ。大きさ的に建築確認が必要ないのが魅力で、パタパタと組み上げて、置いてあります。いつでも移動可能だから楽で便利。けれど建物としての魅力、建てたときの感動の大きさで言えば、初めてこの森にやってきて、伐採からはじめて、皮をむいて、チェーンソーで刻んで、一本ずつ組み上げた一棟目の受付のログハウスがやっぱり一番。

雪の降る中で防寒着に身を包み、白い息を吐きながら丸太と格闘した日々の成果です。子どもでも、手がかかった子ほどかわいいといいます。も一度自分で建てるフルログのハンドカットログハウスを。時間とお金と根性と、今綿密に相談中です。